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日本と外国のお金教育の違い

日本は家庭や学校でお金の話をすることが、長い間タブー視されてきました。お金のことを口にするのははしたないといった国民性が背景にあるかと思いますが、実は「生きていくのに避けては通れない大切なこと」を教えてこなかったということですよね。私自身、大人になって初めてお金のこと(税金や社会保障、貯蓄や保険、投資など)をほとんど知らずに生きてきたと思い知りました。
逆に海外では幼いころからお金や職業についての教育をしていると聞いています。どれほどの違いがあるのか、調べてみました。

日本の金融リテラシーは、どのレベル?

Q1 日本のお金の知識は、世界と比べて、どのような状況でしょうか?(小学3年生の親)

A1 残念ながら、他の先進諸国より低い結果になっています。

金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査2019年」の日米調査比較(米国は2015年の数値)では

 米国日本
金融教育を学校で受けた人の割合21%7%
金融知識に自信がある人の割合76%12%
となっています。学校で金融教育を受けた人の割合は米国もそれほど高いとは思えませんが、アメリカでは学校以外でも自ら学ぶ機会が多いということなのでしょうか。

また、家計管理や生活設計・金融知識・行動特性などの設問(※)に対する正答率を諸外国の同様の調査と比較すると、

 日本英国ドイツフランス
知識60%63%67%72%
行動65%68%82%85%
考え方45%49%57%58%

残念ながら、他の先進諸国より低いことが明らかです。この調査は18歳以上が対象で子どもに対するものではありませんが、金融教育を受けたことがあると回答した学生の正答率が53.6%、受けたことがない学生は39.6%と差があることから、やはり若いうちからのお金の教育は必要なのではないかと思います。
※設問内容に興味のある方は金融広報中央委員会「金融リテラシークイズ」をご参照ください。
→ https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/literacy_quiz/

イギリス・アメリカ・オ―ストラリアの様子

Q2 海外はどうなっているのでしょうか。(小学4年生の親)

A2 各国の状況を紹介します。

【アメリカの場合】

アメリカでは1980年代に金融自由化が開始されましたが、消費者の金融知識や判断力はまだそれほど高くなかったため、金融業界や消費者団体などの間で金融教育普及への関心が高まりました。その後、1990年代後半には消費者向け金融教育プログラムが急増しました。
それでも、なかなか金融教育を受ける機会が少ない層を中心にローンを組んで破綻した人が急増したサブプライム問題などが起こり、より多くの人に機会をあたえるために学校等での導入が拡大していきます。
ただ、アメリカの学校教育は各州に委ねられているため、統一されたカリキュラムではありません。金融教育についても必須としている州、選択制にしている州と対応は様々なようです。

教材は基本的に個人のお金の扱い方の知識(稼ぎ方、使い方・貯め方、借り方、投資の仕方など)を中心に作成され、特徴的なのは学生がオンラインで参加できる「株式学習ゲーム」や「起業体験ゲーム」などが充実していることです。

【イギリスの場合】

イギリスは金融教育の発祥国と言われています。国と民間団体や企業が連携する形で、金融教育を実施する教師を地域のNPOがサポートしているそうです。政府も保護者と子どもが貯蓄や投資を身につけられるよう、子ども名義の貯蓄・投資制度(ジュニアISA)といった税制優遇を受けられる制度を設けています。

学校では小学校高学年から高校生まで、すべての学年ごとに体系的に学べるカリキュラムが設けられているため、長期間にわたって「お金」のことを勉強できます。例えば、小学校高学年・中学生には現金・クレジット払い・借金などの違いを、品物を買うときに何が最善か、その品物を買うために必要なお金をどのように貯めるか考えたりする授業があるようです。中学生・高校生では限られた予算内で学校行事を企画するなど、収支の概念を学びます。高校生になると、職業選択の違いが将来的な金銭的利益に影響すること、金銭では計れない報酬や充足感などもあることも学び、進路選択の参考にしていくとのこと。さすがに進んでいますね。

【オーストラリアの場合】

オーストラリアもアメリカ同様、教育の管轄権は州に委ねられていますが、州の代表者が集まった大臣協議会でいくつかの教科で「金融リテラシー(金融に関する知識や情報を正しく理解し、主体的に判断・行動できる能力)」を身につけるカリキュラムを導入することを決定しています。

そのひとつがファイナンシャル教育のベストセラー「Earn & Learn」に基づく社会科の授業。半年ほどかけて「教室で街を作るために(お給料、税金・社会保障、生活にかかるお金、職業リサーチ・職業面接など)」「教室でビジネス(看板づくり、商品づくり、街づくりなど)」「地域での活動(実際の商品づくり、販売など)」を学びます。
ただ金融知識にとどまるのではなく、起業家教育にまで取り組んでいるところは素晴らしいと思います。
子どもたちが楽しく学び、社会とのつながりまで見いだせるのはいいですね。

現在、日本での取り組みは?

Q3 日本では、どのような取り組みがあるのでしょうか。(小学5年生の親)

A3 金融庁の金融リテラシーマップや、日本FP協会のパーソナルファイナンスの授業などの取り組みがあります。

日本でも近年、子どもを取り巻くお金事情が急速に変化してきていて、金融教育・金銭教育・キャリア教育を求める声が高まっています。金融庁や文部科学省、日銀・金融広報中央委員会、日本FP協会、銀行協会や保険業界、その他一般の企業など様々な団体が「お金の教育」に関わっています。

日本FP協会では2010年にパーソナルファイナンス教育スタンダードを策定しました。人生の基本設計が多様化する中で将来にわたって充実した生活が送れるよう、各年代で身につけるべき項目をあげています。
→ https://www.jafp.or.jp/personal_finance/about/standard/files/personal_finance_standard.pdf

金融庁では2012年に、「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」「外部の知見の適切な活用」の4つの分野で年齢ごとに具体的・体系的に定めた「金融リテラシーマップ」を作成しました。
→ https://www.shiruporuto.jp/education/about/container/program/mokuhyo/pdf/mokuhyo000.pdf

ただ、子供たちが、他の教科の学習で忙しいことや、学校や先生の負担が大きいことなどが原因で、まだまだ学校の授業への導入は進んでいません。
「お金の教育」のプログラムや目標の骨子は整ってきていますから、諸外国に追いつけるよう一層広まっていくといいと思います。

キッズ・マネー・ステーションでも、「買い物体験」「おこづかい」「生活にかかるお金」「世界のお金」などをテーマとしたプログラムをご用意しています。春休みや夏休みの自主開催講座や学校授業などにもお邪魔していますので、ご興味のある方はぜひのぞいてみてください。
→ https://www.1kinsenkyouiku.com/